映画「マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ“」を鑑賞しました。
「We Margiela」から2年半の時を経て、まさかデザイナー本人が“メゾン・マルタン・マルジェラ“を語る日が来るとは…
これの何が凄いって、徹底して秘密主義を貫き通した彼が引退から10年以上の時を経て、その正体の一端(肉声・顔以外のパーツ)を垣間見せてくれる点ですね。
なにせ現役時代、メディアに一切登場せず、インタビューもFAXで応じるだけ。写真も当然NG。そのため、彼を知るのは、友人や同僚、モデル・オーナーなど、彼に近しい人だけ。
つまり、デビュー年である1988年から現在に至るまで、計30年以上もの間、謎のベールに包まれていた訳です。
そんな彼が満を辞して…となるとファンとしては見逃す訳にはいかない。
なので、“公開初日“の“一番最初の回“で見てきました。
映画「マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ“」の感想
まず思ったことは、「映画として面白い」です。
前作「We Margiela」は、彼と関わりがあった人たちが、つらつらと昔の思い出話を語るだけの非常に単調な映画で、正直見るのが苦痛でした。
今作は、前作と構成は似てるものの、グラフィックや音楽でメリハリを効かせるなど、映画的演出を施してることもあってか、最後までダレることなく観ることができました。
これは監督の手腕ですね。
さすが、マルジェラから実績込みで信頼を勝ち得、出演を快諾させただけあります。
『マルジェラが語る”マルタン・マルジェラ”』
繊細で大胆で自由。一寸も眼も意識も離せない凝縮されたドキュメンタリーだった。面白くて刺激的。ドリスヴァンノッテンの映画と同じ監督。好きだ…。ファッションの、アートと市場のバランスが、私は好きなのかもしれない。 pic.twitter.com/1QS5KirHar— 中村蓉 (@YoNakamura0621) September 19, 2021
次いで思ったことは、マルジェラめっちゃ喋るやん…です 笑
まぁ、ドキュメンタリー映画なんで当たり前なんですが、人前に出ない、かつ、コンセプチュアルな服を作成していた彼に抱いていたイメージは寡黙(かもく) or 生真面目で理性的。
なので、映画内でフランクに話したり、笑ったりするさまは“結構“衝撃でした。
他、映画内で一番驚いた事実は、以下の通りです。
- オーナー「レンツォ・ロッソ」に好意的だった。
- ロッソと資本提携した後のシーズンは、マルジェラが意図したものだった。
「レンツォ・ロッソ」は、ディーゼル(DIESEL)の創業者、かつ、マルジェラを買収したOTBグループの社長です。
ディーゼルって、(今は分からないですが)昔はお兄系の筆頭ブランドでした。つまり、マルジェラとは真逆。
そして、資本が入った以降のシーズンは、コンセプチュアルは鳴りを潜め、いわゆる“服として完成度の高いもの“に移行していきました。
なので、自分の表現したいことを抑え、資本家が望むこと、つまりコマーシャルなものへと移行せざるをえなく、結果それが引退への引き金になった…と思っていました。
…がそんなことはなく、実態としては以下の通りでした。
- オーナー「レンツォ・ロッソ」は自分と同じ”たたき上げ”のデザイナー。共感する部分が多々あった。
- “コンセプチュアル“から“きちんとした服を作る“方向に転換したことで、新鮮な気持ちとなり、服作りに対する情熱が戻ってきた。
- 引退の引き金となったのは、ネット配信。
現場が生むエネルギー(熱量)が失われ、即座にレポートや画像が出回るなど、(あらゆる意味での)消費のスピード/トレンドのサイクルが速くなり、変化に対応できる自信がなかった。
つまり、引退の引き金は、時代の変化。それに適応できなかったから…ということになります。
現在のマルジェラは、自分の好きなタイミングで、自分の好きなものを作る生活を送っているそうです。
マルジェラを語る時に、ディーゼルの買収がネガティブに捉えられている気がするんだけど、現在マルジェラって過去最高益じゃなかったっけ。ファッションは「売れたらいいって問題じゃない」と「売れてナンボ」のバランスが難しいな。業界視点で「ダサくなってきた」時が1番収益性高そうなんだけど。
— 深地雅也 (@fukaji38) September 23, 2021
ほんまコレ。クリエイションとビジネスの両立って難しいですね。。
だって、後進に影響を与え、ファンからの人気も絶大な時代の売り上げが「↓コレ」っていう。
おそらくファッションにおける最適解ってコム・デ・ギャルソンのやり方なんでしょうね。クリエイティブと商業でラインを切り離すっていう。
何ともはや。
そんな感じで。終わりッ!!
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