兵庫県立美術館で開催中の「富野 由悠季(よしゆき)の世界」に行ってきました。
富野さんを分かりやすく説明すると、ガンダムシリーズの「原作・総監督・脚本」を担当した方。いわば「ガンダムの生みの親」です。
国民的アニメ、かつファンが多い作品なので、プロモーター側の力の入れようも半端なく、現在、阪急梅田駅のエスカレーター横・壁面は、この展覧会の広告でジャックされている状態。(←これで知った)
…が、かく言うぼくは(富野さんが担当した)ガンダムシリーズを1度も見たことがありません。
そんな状態で何故行ったのか?理由はシンプルで「前々から興味があり、いつか見たいと思っている作品」だからです。
あと、正直言うと全く知識がないわけではなく、昔「スーパーロボット大戦」が好きで結構やり込んでいたので、ざっくりとした知識は持ち合わせています。
目次
「富野由悠季の世界」を見終わっての感想 |in 神戸・兵庫県立美術館
感想の前に一言。「舐(な)めててすみませんでしたッ!」。
…というのも「2時間あれば観れるやろー」と思い、営業時間が終了する”2時間半前”に入館しましたが、「ぜんっぜん時間が足りない!!!」
展示作品の構成
- 第1部:宇宙へあこがれて
『勇者ライディーン / 無敵超人ザンボット3 など』 - 第2部:人は変わってゆくのか?
『機動戦士ガンダム / 伝説巨神イデオン』 - 第3部:空と大地の間で逞しく
『無敵鋼人ダイターン3 / 戦闘メカ ザブングル など』 - 第4部:魂の安息の地は何処に?
『聖戦士ダンバイン / リーンの翼 / 重戦機エルガイム など』 - 第5部:刻の涙、流れゆくその先へ
『機動戦士Zガンダム / 機動戦士ガンダムZZ / 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア など』 - 第6部:大地への帰還
『∀ガンダム / リング・オブ・ガンダム / ガンダム Gのレコンギスタ』
とにかく、絵コンテやセル画などの資料が膨大。かつテキスト量も半端ないので文字面(もじづら)を追うだけでも、かなりの時間を消費します。
富野さんの作品が好き。なので、関連資料はあますことなく目を通したい。音声ガイドも借りて作品について”より深く知りたい”ということであれば、最低でも「6〜7時間」は覚悟した方がいいかと。
ぼくは「第1部の勇者ライディーン」までは、展示作品一つ一つを律儀に見ていましたが、”どう考えても時間が足りない”ってことで、ガンダムシリーズに絞って鑑賞しました。
感銘を受けた展示物について
ざーっと見る中で刺さったのは、以下3点
- ララァとシャア、深く結ばれた関係性をどう匂わすか
- ∀(ターンエー)ガンダムのエピローグ「奇跡の6分間」
- ∀(ターンエー)ガンダムの油絵
ララァとシャア、深く結ばれた関係性をどう匂わすか
展示されていたのは、ララァとシャアが一緒にソファに座っているセル画。
その横に以下の解説が添えられていました。
二人が昨夜一緒に寝ている気分をどう出すか?
これは、ニュータイプを論じ描いていく上で、重要なこと。
もし、ララァがシャアに対して、プラトニックラブ以上のものを感じてなければ、アムロとララァの対立はありえない。ニュータイプの感応は、絶対プラトニック的な理解の仕方だと考えると、もしシャアとの肉体関係のないララァなら、まずシャアに対する未練なぞ一瞬のうちに消滅して、アムロの同志となってしまうだろう。これでは41話のようなシーンは生まれようがない。
ララァのシャアへのこだわりが、アムロと同化できない自分を発見して、彼女が自滅していかざるを得ないのだ。
引用:富野由悠季の世界
ニュータイプであるアムロとララァが精神的な共鳴(きょうめい)を果たす中で、シャアに対する慕情(ぼじょう)も 霧散(むさん)させず、いかにして対立構造を維持するか。
その答えが「肉体関係を伴った愛」。
ただ、子供向けのアニメなので、直接的な表現は当然NG。なので、比喩・暗示的に描写し、両者の関係性を匂わす…そして、それが「悲劇を招くトリガーであり伏線にもなる」…と。
「実にうまい演出だなぁ…」と感嘆しました。
その後、シャアはニュータイプに覚醒し、より深いレベルでの精神的な繋がりを果たせる様になりますが…その頃にはもう”ララァ”はいない…という。
まさに悲劇ですね。
ララァはシャアを守るため死んだのではなく、アムロもシャアもどちらも選べなかったから死んだ。そういう呪いを残して死んだ罪は大きい。あれが無ければ何十万という人が死ぬ様な事はなかったのかもしれない。
— TarCoon⭐️CarToon(たぁくんカートゥーン) (@TKMS_all4A) 2019年10月23日
∀(ターンエー)ガンダムのエピローグ「奇跡の6分間」
この映像はむちゃくちゃ感動しました。
∀ガンダムは全くの初見で、展覧会用に用意されたテキストでしか、内容を把握していない状態でしたが、それでもこの映像には強い感銘を受けました。
以下、解説。
奇跡の6分。登場人物のその後。その中でディアナの肉体が衰えつつあることがさりげなくもはっきりと示される。
ロランが彼女にかける言葉は、人間の命のサイクルを喜ぶものである。
また、明日という約束はいつか破られる時がくる。
だからこそ、この毎日交わされる約束は、明日という未来が輝かしい価値を帯びていることを表現する力を持っているのである。
引用:富野由悠季の世界
何が感動したって、「四季の映像美」、「ロランとディアナの関係性」、「キャラクターの心情・関係性を表す演出」そしてバックで流れる菅野よう子の曲。
これら全てを6分間という短い時間に凝縮しているところ。
(推測でしかないのですが、)本編(全50話)は、この映像を作るための前振りでは..?と思う位、構成・演出・脚本・音楽などすべてが高次元で組み合わさっていました。
特に最後の「また、明日」というセリフとベットで眠るシーンは、ディアナが地球の民として死を受け入れ、有限の命(かつ長くない命)をロラン共々少しでも享受しようとすることを示す象徴的なシーンです。
それにいたく感動しました。
また、曲も映像に引けを取らないくらい素晴らしく、富野さんがはっきりと「背景に流れる菅野よう子の曲の力を借りて奇跡の6分が生まれた。」と述懐(じゅっかい)していのも印象的でした。
∀(ターンエー)ガンダムの油絵
展覧会では、セル画や絵コンテのみならず、CDやDVDのパッケージ元となった絵も多数展示されていました。
その中でも、特に気に入ったのは下記の絵。
昔描いた、ガンダムの油絵です pic.twitter.com/sKm6amTDEI
— あきまん_PLAMAXオリジナル美少女可動プラモデル群開発中 (@akiman7) 2018年9月16日
何が気に入ったと聞かれると、好みでしかない…と言うしかないのですが、むりやり言語化するのであれば「鮮やかな色使いと力強く重厚な雰囲気」にノックアウトされた…って感じですかね。
あと、近くで見ると、筆の軌跡で一部絵の具が盛り上がっており、立体的になっている点も見ていて面白かったです。
・・・
こんな感じですね。ざーっと見た中で一番興味が惹かれたのは、「∀(ターンエー)ガンダム」です。
他の作品が、SF的なテイストに対し、この作品だけ明らかに趣(おもむき)が違いました。
展覧会に関しては、全て鑑賞するには時間が足りなすぎました。かなり不完全燃焼なので、また行こうかと思います。
そんな感じで。終わりッ!!
富野由悠季の世界展。序盤から安彦さんの劇場版ガンダムポスター原画、本編の原画、レイアウトの圧倒的画力で体力ごっそり削られた所に、湖川さんの原画が続いてぶっ倒れ、永野さん登場で新時代を感じ、あきまんさんのターンエー原画の迫力で昇天と、まともな状態で会場を後に出来ないのがホント壮絶。 pic.twitter.com/yHtw5SiEPn
— モデリズム 小林和史 (@kobax27) 2019年6月23日
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富野由悠季の世界:概要
会期 | 2019年10月12日(土)~12月22日(日) | ||||||||
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開館時間 | 10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで ※会期中の金・土曜日は夜間開館のため20:00まで |
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チケット料金 |
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定休日 | 月曜日 | ||||||||
電話番号 | 078-262-0901 | ||||||||
所在地 | 神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1 | ||||||||
HP | 富野由悠季の世界 |
兵庫県立美術館:MAP(地図)
アクセス |
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