マルジェラのデザイナー「ガリアーノ」の映画を鑑賞。感想を綴ってみた

映画「ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー」の感想記事

見応え満載。2時間 退屈せずに見れました。

ファッションデザイナーの映画って、だいたい以下の様な構成で、演出や脚色も無いので、長時間の鑑賞は結構しんどいんですよね…

  • 本人や周囲の人々が過去の思い出話に華を咲かせる
  • 過去のアーカイブ映像を流す

そして本作も上記構成を踏襲してるんですが、ガリアーノの場合”ヘイトクライム”による転落もある訳で。

しかも、それ以前は栄華を極めてたので、高低差が凄まじいんですよね。

学校を首席で卒業。受賞歴多数。ディオール就任後の売り上げは以前の数十倍。タバコ1つ吸うにも3人のアシスタント。神のように振舞う

オーバーワーク・ビジネスパートナーの突然死により”どんどん”壊れていき、差別発言により解雇。全てを失う

構成の妙もありますが「振れ幅の大きい人生」それ自体が見応えに繋がってるのかな…と思いました。

ぼく

ちなみに映画の原題は「High & Low」です。

ただ、見応えはあったものの、以下の点については、かなり”もやもや”しています。

ユダヤ人への差別的発言は許せないのに「職業を軽視するのはよいのか」「アジア人を軽視するのはよいのか」

まぁ、これはガリアーノ個人というより西洋社会に対してですね。

職業を軽視するのはよいのか

ガリアーノがジバンシィのデザイナーに大抜擢された時、めちゃくちゃ叩かれたんですよね。

なにせ”ジバンシィ”といえば、フランスの老舗メゾン。

そんな由緒正しきメゾンを、どこの馬の骨ともわからないイギリス人のデザイナーに託す訳ですから反発は当然。

色んなメディアが懐疑的な反応を示す中、”あるメディア”では以下の様な見出しを掲げていました。

配管工の息子がジバンシィのデザイナー!?

これを見た時「いやいやいや、ちょっと待てや」と。

ユダヤ人への差別的発言は「絶許」なのに、職業を揶揄(やゆ)するのはOKなんかい!と、ずっこけそうになりました。

アジア人を軽視するのはよいのか

ガリアーノがユダヤ人への差別的発言を行い、ディオールのデザイナーを解雇させられたのは知っていました。

…が、それ以外にも”もう1件”アジア人に対して差別的発言行ってるんですよね。

これは初耳。そしてそれは当然。

各メディアはユダヤ人への差別的発言にのみ焦点を当て問題視したからです。

人種差別のイメージ

同じ差別発言なのに重みが違う

そして当のガリアーノも贖罪(しょくざい)と自省(じせい)を行ったのはユダヤ系の人々に対してのみ。

つまりアジア人に関しては、それらを行っていない様に感じました。

…というのも、ガリアーノに侮辱されたアジア人、つまり被害者もこの映画に出てくるんですよね。

そして、何がびっくりしたって、この方”事件から13年経った今でも”ガリアーノを恨んでるという。

理由は、直接の謝罪をされてないから。

言葉の暴力のイメージ

暴言吐かれたのに…

 

一方、当のガリアーノは「裁判所で謝罪をし、その時(被害者とは)目が合ったから許してくれてると思う」と自己完結している訳です。

ユダヤ人へ差別的発言を行ったことに関しては、贖罪のために多方面にお詫び行脚(あんぎゃ)を行い、ユダヤ人の歴史をも学び理解を深めるなど、

自身の行った発言に対し真摯に向き合ってるのに対し、アジア人に対しては、そういった姿勢/配慮が1mmも無いなーと。

スポットライトのイメージ

アジア系は”かやの外”

そしてそれはメディアも同様。

今年の五輪でもアジア人差別がひどいと取り沙汰されましたが、たまたま顕在化しただけで普遍的なモノなんだなーと改めて痛感しました。

ぼく

自分がやられたらガチ切れするのに、他人には平気でする。どういうこと??

なお、ユダヤ系への差別発言が何故ここまでNGかというと、(歴史的背景もありますが)ユダヤ社会が極めて大きく”国際的に強い影響力を持ってる”からですね。

ぼく

ガリアーノがディオールのデザイナーを務めてた時のCEOもユダヤ系の方です。

とまぁこのように、要職に就いてる方が多いです。

ちなみにナタリー・ポートマンもユダヤ系です。そのため、ガリアーノのことは絶許だそう…


色々書いてきましたが、ガリアーノのことはめちゃくちゃ好きです。

それこそマルジェラのデザイナーに就任する前、ディオールや自身のブランドをやってた時から。

マルジェラに関しては、古参ファンからしたら「こんなんマルジェラちゃうわ!」と否寄りの意見が多いかもしれません。

ただ、個人的に一番の悪って「終わること」だと思うんですよね。

ガリアーノのデザインに関しては、マルジェラ”らしさ”も垣間見えるし、定番モノに関しては”今でも”きっちりリリースしてくれる。

てか、90年代〜00年代のデザイナーズ御三家の現状踏まえると、マルジェラの状況ってかなり恵まれているかと思います。

デザイナーズ御三家の現状
マルジェラ:売り上げ右肩上がり
ヘルムートラング:ユニクロのグループ傘下
ラフシモンズ:2023年にブランド終了
ぼく

とはいえ、昔と比べると価格の高騰っぷりがすごく、おいそれとは買えなくなりましたが…

最後に本映画で出てきたもっとも好きな言葉で締めたいと思います。

ワインの中に真実がある…のではなく「戯言がある」

酒で人の本性が出る…というのは懐疑的だったので、上記の言葉を精神科医が言ってたのが一番印象的だったかな。

そんな感じで終わりッ!!


冒頭のアイキャッチ画像の立て看板は、かつて大阪農林会館の入口にあったモノです。

マルジェラが入居していた202号室のドアを開ける際は、若干の緊張と共に…って感じでした。

メゾン マルジェラ オオサカ

懐かしの…

それに比べ今の店舗(心斎橋パルコ)は、開放的ではありますが”結界張ってる??”ってくらい入りづらいです。。

ぼく

もはやラグジュアリーブランド。

↓ガリアーノ期のマルジェラで一番気に入っているアイテム

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください