「ベネッセアートサイト直島」の舞台の一つである「犬島」へ行ってきました。
これまで「直島(なおしま)」や「豊島(てしま)」には行ったことがあるのですが、犬島へ行くのは今回が初。
本当は、前回「直島・豊島」へ行った際に、「犬島」にも行くつもりだったのですが、豪雨に見舞われ断念しました。
ただ、本来、一番行きたかった場所は「犬島」だったんですよね。
..というのも、「直島・豊島・犬島」は、島同士が離れていることに加え、島内にあるアートスポットも点在しているので、限られた時間で全て回りきるのは不可能です。
なので、滞在時間や 各スポット間の距離(移動時間)などを考慮して、観光写真の中から良さげなスポットを探す必要があります。
その中で、一番惹かれたのが「犬島精錬所美術館」でした。
【岡山・犬島精錬所跡】犬島にかつて存在した銅の精錬所。自山鉱、電錬所をもたなかったことと、銅価格の下落などに伴い、1925年に廃鉱。現在は直島福武美術館財団により犬島アートプロジェクトの一環で美術館として再利用されている。
— B面 (B級スポット・珍スポットガイド) (@bii_men) 2019年4月9日
惹かれた理由は、「退廃的な美しさ」ですね。軍艦島や友ヶ島などが好きな自分としてはドンピシャなスポットでした。
魔晄炉( ≒ 原子炉 )が爆破され、セフィロスとの戦いから500年後、魔晄( ≒ 放射能 )によって廃墟となった、科学文明の栄えた街ミッドガルを眺めるレッドXIIIとその子ども達
ファイナルファンタジーⅦより pic.twitter.com/p75zR8ANwW— 崎山正克 REQUIEM (@sacchiamo) 2016年1月24日
実際行ってみると、まぁーすごい。風景も”もちろん”良かったのですが、「犬島精錬所美術館」の”シニカル”かつ”ビター”な世界観にはとても魅了されました。
個人的に「ベネッセアートサイト直島」の舞台となっている島の中では一番好きな場所です。そんなお気に入りの島を写真と共に振り返り。
目次
犬島の観光情報(滞在時間・モデルコース・ロッカーの有無など)
滞在時間・各スポットの位置関係は?
犬島は周囲4kmあまりの小島で、徒歩で回りきれる広さです。そのため、短い滞在時間で十分満喫できます。
各スポットの位置関係は以下の通り。
「犬島ハウスプロジェクト」・「犬島 くらしの植物園」だけ他のスポットより離れた位置にありますが、充分歩ける距離です。(ちょいしんどいけど…)
島には「4時間25分」滞在しましたが、「写真をめっちゃ撮る」+「ご飯をゆっくり食べる」+「犬島精錬所美術館に2回行く」を行った上での滞在時間です。
アートスポットをざーっと回って、カフェで一息つく位であれば、「3時間」位でも充分事足りるかと思います。
効率よく回れるコースは?
「チケットセンター」で鑑賞チケット購入後、「犬島精錬所美術館」を観光。
その後、「家プロジェクト → 犬島ハウスプロジェクト → 犬島 くらしの植物園」の流れで観光するのが一番ベターかと。
…とはいえ、鑑賞に時間がかかるのは「犬島精錬所美術館」位。島内も徒歩で回れるくらいの大きさです。
そのため、「3〜4時間」滞在できる様であれば、観光の起点となる「チケットセンター」で鑑賞チケット購入以降は、どの順番で回っても問題ないかと思います。
荷物を預けたいんだけど、ロッカーはあるの?
チケットセンターにあります。
お金(100円)を入れる必要がありますが、荷物を出す時に、お金が返ってくるタイプのコインロッカーのため、実質無料で利用できます。
また、荷物はチケットセンターに預けることもできます。(コチラも無料)
チケットセンターの行き方は?
犬島港を背に、左に進むとチケットセンターです。
下船したら下の建物がすぐ見えます。それ位の距離感。
ここで鑑賞チケット(2,060円)を購入します。
なお、チケットは共通チケットとなっており、2,060円で「犬島精錬所美術館・家プロジェクト・犬島 くらしの植物園」全て鑑賞することができます。
また、チケットセンター内は、ショップやカフェが併設されているため、お土産の購入や観光の合間の休憩場所としても利用可能です。
犬島チケットセンター:概要
営業時間 | 10:00〜17:00(カフェのラストオーダーは16:30) |
---|---|
休館日 | 施設に準じる |
チケット料金 | 2,060円(※15歳以下無料) |
電話番号 | 086-947-1112 |
所在地 | 岡山県岡山市東区犬島327−4 |
HP | ベネッセアートサイト直島 |
犬島精錬所美術館|感想
館内
展示されている作品は、以下6つ。(写真撮影は禁止)
- イカロス・セル
- ソーラー・ロック
- スラグ・ノート
- イカロス・タワー
- ミラー・ノート
これらの作品はつながっており、総称として「ヒーロー乾電池」という名前が付けられています。
作品のコンセプトは、「近代化への警鐘」ですね。
これはアート作品のみならず、”犬島精錬所”自体がその象徴でもあります。
…というのも犬島精錬所は元々、銅の精錬所として栄えていましたが、銅の価値の暴落とともに操業を停止。
稼働していたのはわずか10年と短い期間でしたが、その間に大気や土壌・地下水などが汚染に晒され、排出される鉄やガラス・スラグ(精錬後のカス)によって、砂の色は黒くなったそうです。
犬島の砂はとても黒い pic.twitter.com/TzZKcY3DhY
— 無為 (@not_alwayz_so) 2019年5月4日
操業停止後、犬島精錬所は誰に管理されることもなく90年以上も放置。それを保存・再生したのが「犬島精錬所美術館」です。
近代化産業の負の遺産である精錬所を軸とし、アート通して今一度「環境(豊かさ・便利さの代償としての近代化)」について考えよう…というのがこの美術館全体の主旨。
これは「イカロス」という作品が(総作品数の)三分の一を占めていることからも分かるかと思います。
翼を焼かれたイカロスのように、
禁断の果実を食べて楽園を追われた2人のように、人間が神に近づくことはやはり原罪なのだという考えが根底にあるのかしら。
醜汚に関わらず 人が生命を創造する、それが禁忌で決して赦されざること。
畢竟、近代科学の傲慢さとそれが目指す所せの警鐘。
— しょこら@読書中 (@chocolatxxchoco) 2018年3月11日
あと、驚いたのが、一連の作品の全てが「三島由紀夫」をモチーフにしたものであること。
作品の総称である「ヒーロー乾電池」は、三島邸玄関のチャイムの電源に使われていた電池の名称ですし、作品自体でも三島邸の建具(ふすま・階段など)が使われていたりします。
・・・
三島由紀夫…ぼくらの世代では全く馴染みがなく、ぼく自身作品に触れる機会もありませんでした。知識としてあったのは、「昭和の文豪、かつ、最後に切腹をした日本人」であること。
ただ、(だいぶ前になるのですが)美輪明宏さん関連で三島由紀夫にたどり着き、その後「三島事件」の内容を見て、その凄まじさに圧倒されたことは今でも覚えています。
三島事件の行動の発端は、「経済発展(近代化)による日本人の精神的堕落の憂い・国を守る存在である自衛隊が蔑ろにされている」こと。
訴えは「憲法改正により自衛隊を国軍化する」…という認識ですが、いずれも日本という国を愛したが故の行動だと思います。
三島由紀夫曰く、「このまま行ったら〝日本〟はなくなってしまうのではないかという感を日ましに深くする。日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るのであろう」と。
— 優 (@yuuuch0912) 2019年5月4日
それを裏付けるのが被害者の言葉。日本刀で斬られ重傷を負った中村2佐は「まったく恨みはありません」と当時のことを述懐し、人質となった総監に至っても、後に下記の通り語っています。
「被告たちに憎いという気持ちは当時からなかった」とし、「国を思い、自衛隊を思い、あれほどのことをやった純粋な国を思う心は、個人としては買ってあげたい。憎いという気持ちがないのは、純粋な気持ちを持っておられたからと思う」
引用:三島事件
…とまぁ、過去に衝撃を受けた事件の領袖(りょうしゅう)をアート作品のモチーフとして選んだ点が個人的にはもっとも興味深かったです。
犬島と三島由紀夫、一見、全く関連性は無さそうですが、「近代化への警鐘」というコンセプトで考えると、個人的にはものすごくしっくりきました。(その2つを結びつけるとは、なんたる発想力…!)
あとこれは余談ですが「イカロス・タワー」という作品で明らかに「デュシャンの泉」を意識した(パロった)ものが置かれていたのには笑いましたww(皮肉かな??)
マルセル・デュシャン(1887-1968)は今日10月2日が忌日。ニューヨーク・ダダの先導者で、『泉』等の「レディ・メイド」により20世紀美術に最も影響を与えた一人とも言われる。
チェスをする場面から始まるデュシャンのドキュメンタリーhttps://t.co/iTUmpTTTig pic.twitter.com/axPMO2uoYH— nave (@nave4000) 2017年10月2日
館外
犬島精錬所美術館の外は、カラミ煉瓦造りの擁壁(ようへき)や遺構(いこう)、復元整備によって生まれ変わった精錬所など、フォトジェニックなスポットが多く見どころ満載です。
かつての製錬所を拠点に再生し美術館とした「製錬所」の放つパワーは凄まじかった。三島由紀夫の世界を表現したテーマは「ヒーロー乾電池」。強烈でありつつも穏やかな?空間だった。近代化産業遺産となった製錬所は、からみレンガで囲まれていて、とても美しい異空間でした。
— ミヤサト (@miyamod) 2010年9月30日
犬島精錬所美術館:概要
開館時間 | 10:00 〜 16:30(最終入館16:00) |
---|---|
休館日 | 火曜日(3月1日〜11月30日)/ 火曜日から木曜日(12月1日〜2月末日) ※ただし祝日の場合は開館、翌日休館 ※ただし月曜日が祝日の場合は、火曜日開館、翌水曜日休館 |
鑑賞料金 | 2,060円(※15歳以下無料) |
電話番号 | 086-947-1112 |
所在地 | 岡山県岡山市東区犬島327−4 |
HP | ベネッセアートサイト直島 |
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犬島 – 家プロジェクト|感想
個人的に、刺さる作品はなかったです。コンセプトを知った上で見てもその印象は拭えませんでした。
ただ、それぞれの作品に”どういった意味が込められているか”を学芸員の方々がきっちり説明してくれるのは素晴らしいと思います。(現代アート特有の意味を考えるな!感じろ!がとても苦手なので…)
ただ、上2つの作品に関しては、「ヒプノシスのジャケットデザインに通づるものがあるな…!」とちょいテンションが上がりました。
Biota(Fauna/Flora)は、Led Zeppelin『聖なる館』のイメージ
Self-loopは、ピンク・フロイド『ウマグマ』のイメージ
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ヒプノシスとは?
奇抜で前衛的、一目見たら忘れられないアルバムジャケットの数々を生み出した「ヒプノシス」
「いまだったら、デスクトップに向かってちょちょいと2時間でできることが、あの頃は一ヶ月以上かかったからね。デザインはよっぽどのことがない限り変更しない。一回ぽっきりだ」https://t.co/q34ZFkiPpD
— HEAPS Magazine編集部 (@HEAPSMAG) 2019年4月8日
締めは犬島らしく、犬のアート作品で。
ちなみにこちらの作品だけベネッセのアート作品とは別物になります。
そんな感じで。終わりッ!!